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アメリカにない薬学図書館協議会がなぜ日本で誕生し得たのか

薬学図書館に就職して以来ずっと不思議に思っていることがありました。
それは、日本の図書館学・図書館情報学は戦前戦後に関わらずアメリカに倣って発展してきたにもかかわらず、なぜアメリカにない薬学図書館協議会が日本にはあるのだろうということです。
直接この疑問に答えられるわけではないのですが、関連してアメリカに薬学図書館協議会がない理由を見つけました。


前回にも述べたように、村上清造に図書館学について教えを受けた伊藤四十二(東京大学薬学部教授/1964年より東京大学附属図書館長)は、

"それにつけても薬学に前記の医科大学図書館協議会のような横の連絡組織の無いことが誠に残念で、その結成を切望していた。"*1

ことから、全国の薬学大学の図書館にその結成を促し、1956年に日本薬学図書館協議会を興しました。医科大学図書館協議会と同様、その目的は図書館資料の相互利用ですが、村上清造が創刊号から13巻まで「薬学関係文献探索法」を連載するなど、薬学図書館員の教育の場としても非常に重要であり、日本薬学図書館協議会が生じたことが今の日本の薬学図書館に繋がっているといえます。
  
しかし、Pharmaceutical Libraryは、アメリカにはほとんどありません。論文を検索しても、Medical Libraryは山と引っかかるのに対し、Pharmaceutical Libraryはないのです。アメリカでは、SLAの分科会に薬学分野の連絡組織がありますが、Medical Library AssociationのようにResearch Library Associationとしての薬学は存在しません。
その理由について、前述「協議会十年の回顧」において、伊藤が次のように述べていました。
  

...医学のように国際的な連絡がとれないものかと思いまして, 10月にFIDに参加しました折に, The American Association of College of Pharmacyの事務局に参りまして, Executive Directorと会って話をしましたが, 残念乍らアメリカの薬科大学協会の中のLibrary Sectionは, 余り活潑な動きがないということで駄目でした。
そこで, National Library of MedicineのMiss Sewellに会って, 今の問題について相談しましたが, Miss Sewellの関心の主体は, Drug Informationにあり, 薬学全般の図書館の問題については, 駄目でした。
アメリカの薬科大学は強力なのは幾つかあるが, 全般的にみて非常に弱いんですね。図書館の見地からだけみますと, 薬科大学で独立した図書館をもつ大学は27に対し, 共用の図書館をもっているのは47と倍に近いのであります。それに対し医大では, 全部で99の中87と, 殆んど全部が独立しております。
こういう関係でアメリカでは薬学図書館のAssociationは出来ないのだということでございました。

  
なんとなく、アメリカの大学周りの環境が違うんだろうなと思いつつ調べられていませんでしたが、ここでは大学図書館の独立性が異なるために生じ得なかったと述べられています。薬学部(の図書館)は他の分野と共同であるのに対し、医学図書館はそのほとんどが独立しているという。それが単科大学だからなのか、総合大学でも医学図書館は独立して組織する文化だったのかはもう少し調べてみなければ分かりませんが…なるほどなあ、と思いました。
医学図書館協議会は戦前よりアメリカのMedical Library Associationの年会に参加したり、講習会に参加したりと連携をとっていたようで、アメリカの影響は多かれ少なかれあるんだと思います。
それに対し薬学図書館協議会はdomesticに発生してしまったわけです(「薬学図書館」の2号か3号でSLAのPharmaceuticalセクションと連絡取ってみたらあっちでも薬学図書館員の教育を始めようとしてるとこなの、って書いてました)。海外により発展した薬学図書館の知見がなくても薬学図書館として成り立ち得たところには、やっぱり村上清造が成した「薬学文献学」の影響が大きかったのではないでしょうか。そして、図書館情報学において完全domesticな分野っていうのは実はとっても珍しいのではと思うのです。
  
ちなみに、村上清造の薬学文献学は日本薬学会の薬学文献部会を経て現在の医薬品情報学に繋がっています。つまり間宮不二雄らからの図書館学が薬学分野においては医薬品情報学という一つの学問分野を成しているのではないかと妄想しているわけですが、それはまた別の話。

*1:伊藤四十二. 巻頭言. 薬学図書館, 1956, 1(1), p.1.

間宮不二雄の「圕とわが人生」と偉人の人となり

休日に間宮不二雄の「圕とわが人生」を読んでました。
いやーすごいなあ、他人の評伝からも自筆の論文からも、そのエネルギッシュさがよく分かります。
  
元々、薬学図書館協議会を興した伊藤四十二(東大薬学教授)に図書館学を指導した村上清造の足跡を辿っていました。
富山の薬商の長男で富山薬専を首席で卒業するくらい優秀だった村上ですが、就職で”思うようにいかず”、伝手をたどって富山薬専の図書室に生徒の相談役として勤務することになりました。
彼の境遇を察し個人の研究室を用意して図書と兼務にする話もありましたが、”「二兎追うものは一兎も得ず」との思いから”、や”仕事をやるなら、多くの人が望む方向より人のやらないものを選んだほうがよい”という彼の信念の元、図書館の人となります。
その後、村上は独自に図書館の勉強を始めるのですが、就職翌年に青年図書館員連盟に入会、翌々年に大阪で図書分類法の講習を受けたことが人生の大きな転機となります。
大阪で間宮不二雄始め、森清加藤宗厚青年図書館員連盟のメンバーと交友を深め、村上曰く"間宮塾"に通い、頻繁に下宿したことが、村上の図書館学への傾倒に拍車をかけたことは間違いありません。
ご存知の通り間宮不二雄はNDCだけでなくNCR,NSHを世に出した人でありますが、彼がいなければ薬学図書館協議会もなかったのかと思うと非常に偉大な人だなと改めて思った次第です。
  
村上は間宮を"生涯の師"と慕っており、また間宮も図書館に対し熱血漢な村上を評価していたようでした。
間宮は戦災で消失した後に収集した間宮文庫の寄贈先を村上のいる富山県立図書館にしていますし、間宮が亡くなった当日も村上が訪問する予定で、奇しくも間宮没後最初の来訪者が村上であったことが「圕とわが人生・後期」にある間宮氏孫の手記で綴られています。
  
自伝や評伝関係を読んでいて、それまで事実でしか知らなかった人の人となりが垣間見えるのはとても面白いですね。
間宮不二雄は万年蒸気機関車と評されるように非常にエネルギッシュで、その情熱を生涯図書館の発展に注いだようでした。熱血漢で話に熱く、"間宮ファン"が全国にいたといいます。間宮商店を退職した森清が転職先の採用でもめた時も鳥取県庁に出向いて説得し、かつ給金の足りない分を間宮商店から給付するほどの面倒見の良さでした。多くの人に好かれ、愛された様子がよく分かります。
森清(もり・きよし)をその名たらしめたNDCも、元々森が趣味で作っていたものを間宮が無理に言って出版させたものでした。間宮に対し森は兄妹の死のノイローゼで間宮商店を退職し、間宮の伝手で職を転々としながら中国で終戦を迎え、疎開先の家族が飢えていたときに麻雀や映画を楽しんでいたという繊細だけれども飄々とした方でした。ここだけ抜粋すると鬼畜ですが(笑)人離れした熱血漢であった間宮に対し、非常に人間らしい方の印象を受けました。彼は晩年国立国会図書館に勤務しますが、恐らく生涯に渡って、活動家というよりも図書の分類をしていられれば幸せというタイプだったのかなと思います。
「図書館評伝」での記述は、間宮が生涯商人であったのに対し、森清は(どんな態度であれ)図書館員になったとして、図書館員として彼を評価するような調子で書かれていました。しかし、森清森清たるところはNDCを作ったところと再三言われており、そのNDCは間宮不二雄がいなければ成されなかったことも事実です。図書館界という言葉を図書館員以外を排斥するようなニュアンスで使うのは好きではありません。
そんな間宮も戦災で全て失い、戦後は意気消沈してか北海道に隠遁してしまいました。間宮が残って活動を続けていれば、今の図書館を取り巻く環境も少し変わっていたのかもしれないなと思います。
  
ところで間宮不二雄の人となりを読めば読むほど、なんか見たことあるなこういう人、という気持ちになります。魅力的な話をする人はその分アンチも多いので、間宮が好きではない人がいるのもよくわかりました。
  

よんだ本

間宮不二雄. 圕とわが生涯・前期. 間宮不二雄, 1969, 221p.
間宮不二雄. 圕とわが生涯・後期. 不二会, 1971, 216p.
村上清造. 図書館と共に半生紀. 富山県図書館協会, 1981, 142p.
日本図書館文化史研究会 編. 図書館人物伝:図書館を育てた20人の功績と生涯. 日外アソシエーツ, 2007, 457p.

  
  
ちなみに、春先の結婚式に向けて打ち合わせが増加しているのか、日に日に著作権記事へのアクセスが増加していて気が気じゃありません。間違ってないかと怖くて。。読まれた方の準備が上手くいきますように。

”ワンマンズ・ドリームII -ザ・マジック・リブズ・オン”を初めて見てきました!

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ディズニーランドは何度も行っているにも関わらず、ワンマンズ・ドリームIIは一度も見たことがありませんでした。
というのも、抽選にあたったことがなかったからです。

ワンマンズ・ドリームII -ザ・マジック・リブズ・オン
 
1月末にアナとエルサのフローズンファンタジー目当てにランドに行きましたが、みんなアナ雪目当てだったためにワンマンズ・ドリームIIの抽選なし初回公演が空いていて、ちょっと待っただけでど真ん中で観覧できました!すごい!
正直想像以上に良かったです。これまで見たことなかったのを心より反省します。
隅っこであまり目に触れないので私みたいに行ったことない方は多いんじゃないかと思いますが、本当にオススメです。
  
疲れた時にはミッキーで癒やされよう、ということで写真まとめ。


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ファンの方がいるようで、この人が出てるときにばしゃばしゃ連写音がしました
  
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ワンマンズ・ドリーム、ヴィランズが格好良すぎです
  
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実はノートルダムの鐘を見たことがなく、フロローを知りませんでした。ランドでもワンマンズ・ドリームくらいだと思いますが、あまりのカリスマ性に目を奪われてしましました。素敵。
  
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ちなみに、等身大(以上)オラフが微妙だなと思ったフローズンファンタジーでしたが、意外と大丈夫でした。
パレードよりもワンス・アポン・ア・タイムのアナ雪verが凄く良かった。
混みすぎてもう行けませんが、何度も見たいです。
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結婚式における音楽利用の著作権が分かり難過ぎるので整理する

ISUM(一般社団法人 音楽特定利用促進機構)が結婚式における音楽著作物の複製権の代行処理事業を始めました。
結婚式で使う音楽著作権を一括代行処理「一般社団法人 音楽特定利用促進機構」 | ISUM
  
これを受けて、結婚式における著作物利用と著作権に関する記事がたくさん書かれていますが、正しい説明がなされているページはほとんどありません。知恵袋の回答も間違っているものが多いですし、あまりに分かり難いので弁理士の方のブログても正しくないことも。。
かくいう私もこの記事を途中まで書いてやっと自分の思い違いに気づきました。
  
そこで、自分の中でのまとめも兼ねて、自分なりに結婚式の著作権について整理したいと思います。
なお、以下は個人の解釈の1つであり、必ずしも正しいものではありません。特に、著作権の問題は判決が出ない限り決着が着かないことが多いので、その点ご了承ください*1。間違っているところがあれば、ご指摘いただけると嬉しいです。
  
注:著作隣接権については詳しく言及していません。勉強不足で抜けているところなので、著作隣接権を考慮するかで変わるところがあるかもしれません。
  
2016/1/24追記 新しく記事を書きましたのでそちらも併せてごらんください。この記事は著作隣接権について省略している点で不十分です。
humotty-21.hatenablog.com


   

結婚式における音楽利用に係る著作権

著作権は複製権や公衆送信権など著作物に係る権利の集合体です。
結婚式で音楽CDなどからBGMを流す行為には、著作権の中でも、複製権と演奏権という2つの権利が関係してきます。
  

複製権
音楽を複製(コピー)する権利。購入したCDをパソコンに取り込んだり、編集(トリミング)などで一部の部分だけを別のCDにコピーするために必要
演奏権
音楽を演奏するために必要な権利。CDから再生する場合も、著作権法上は演奏にあたる(複製ではない)。

  
著作権は基本的に全ての著作物に存在し、それを利用するためにはすべからく権利者の許諾を得なければなりません。
但し、一部の行為に対しては例外的に著作権者の著作権の権利制限が認められており、誰でも、著作権を侵害することなく著作物を利用できます。
私たちが日常で著作権を意識することなく著作物を利用しているときは、ほとんどすべてがこの権利制限に当る行為です。
例えば、図書館で本を借りたり、コンビニで本をコピーしたり、家でテレビを録画するのも、全て著作権法上で定められた権利制限の中の行為なのです。
権利制限に当てはまらなければ、一般的に、必ず著作権料を支払うか権利者から許諾を得なければなりません。
なので、まず結婚式における音楽利用が権利制限に該当するかどうかを確認する必要があります。
  
ここで重要なのは、結婚式において利用する著作権には複製権と演奏権があり、それぞれの権利の利用者(許諾の申請者)が異なり、かつそれぞれの権利制限の条件も異なるということです*2
  

複製権

まず複製権です。結婚式のBGMは1曲まるまる流すよりも、欲しい部分だけ、や何秒だけ、という部分的に流すことが多いので、ほとんどの方は事前に編集されるのではないかと思います*3。この編集の際に複製権が関わります。
複製権の権利制限で主に適用されるのは最も有名な著作権法第30条の"私的使用のための複製"です。

第三十条  
著作権の目的となつている著作物(以下この款において単に「著作物」という。)は、個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内において使用すること(以下「私的使用」という。)を目的とするときは、次に掲げる場合を除き、その使用する者が複製することができる。

この私的使用のための複製権の権利制限は「個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内において」が条件です。この人数は4~5名程度とされていますので、結婚式を目的にした場合は適用されないと解されるのが普通な気がします。
なので、音楽CDを複製する際の権利は管理団体に権利許諾を申請する必要があると思います*4
この許諾申請は個人でも行うことが可能です。著作権の管理団体はJASRACだけではありませんが、結婚式に利用するような曲の多くはJASRACが管理していると思いますので、JASRACに個人で権利許諾の申請を行うことが適切だと思われます。
許諾申請の方法とおおまかな金額は次の機会に。
  

演奏権

次は演奏権です。
ややこしいですが、音楽CDを再生することも演奏権にあたります。「再生」という言葉で誤解しそうになりますが、複製権ではありません。もちろん、再生だけでなく歌ったりバンド演奏することも演奏権にあたります。
個人が演奏権を利用することについては、以下の複製権とは異なり、第38条の権利制限が該当します。

第三十八条 (営利を目的としない上演等)
公表された著作物は、営利を目的とせず、かつ、聴衆又は観衆から料金(いずれの名義をもつてするかを問わず、著作物の提供又は提示につき受ける対価をいう。以下この条において同じ。)を受けない場合には、公に上演し、演奏し、上映し、又は口述することができる。ただし、当該上演、演奏、上映又は口述について実演家又は口述を行う者に対し報酬が支払われる場合は、この限りでない。

第38条の権利制限に該当する条件は、(特定及び不特定の)多数ではないことや営利性です。
個人が結婚式で演奏権を利用することは、ご祝儀が営利性にあたらないこと(ご祝儀から利益を得ないこと)、また参加者が特定多数ではないこと(一般的に、50名以上という解釈があります)が条件となります。これは微妙なラインですが、しかしそもそも、結婚式での演奏権の利用者・許諾申請を行う必要があるのは個人ではありません。
  
結婚式における演奏権は、音楽を再生する場所、つまり式場が利用する者と解釈されます。
著作権法上超有名なクラブキャッツアイ事件ですね。カラオケ法理といわれるそうです。
  
カラオケ法理 - Wikipedia
  
演奏権は結婚式場が利用すると解されます。式場はほとんどすべてが営利行為なので、これは権利制限が適用されません。
結婚式場は自館において演奏される曲全ての演奏権の著作権料を支払う義務があるのです。そのため、一般的にはカラオケ店などと同様に、既にJASRACなど管理団体と包括契約を結んでいると考えられます。
  
つまり、結婚式における演奏権の利用は問題なく行えるというわけです*5
  

どうしてこんなに分かり難くなってしまったのか!

戦犯は間違いなくISUMです。
加えて、著作権の理解なく著作権の記事を書くことはすごく難しいのだと実感しました。というか生半可な知識があっても間違えます。現に私も記事を書く途中まで第30条と第38条の権利制限の条件を混同していました。
  
ISUMとは、一言でいうと結婚式における音楽CDの複製権処理の代行申請を行う団体です。
これだけならまだ分かるのですが、彼らが対象にしているのはブライダル事業者です。もちろん、DVDやCDを制作する事業者が一括申請できるということでメリットがあるのですが、式場などもまとめて対象にしてしまっていること、また著作権を理解している人が少ないからか、「結婚式で音楽を使うことは著作権侵害にあたるため申請して許諾を得る必要があります」なんていうおおざっぱな説明で通しているために大きな誤解が生まれているのではないでしょうか。
  
ISUM自身も途中まで演奏権の権利許諾の条件を複製権にあてはめて宣伝していました。これは間違いです。しかし、当初のプレスリリースを介しウェブニュースで波及し、それが当然のように流布しています。で、それを読んでおかしいと思う弁理士がブログを書くのですが、そもそもISUMが管理しているのが演奏権ではなく複製権であるということを誤解するためにまた正しくない解説になるのです。
以下に詳しく書きます。
  
ISUMは設立当初、結婚式におけるご祝儀を得ることが営利性にあたるため、また特定多数に公開するために私的利用を逸脱すると説明していました。
現在は修正されているため、過去のその文言を引用したと思われるNAVERまとめから転載します。
  

Q3.
自分の結婚式で市販楽曲を利用することは、なぜ私的利用の範囲を超えるのでしょうか?
A3.
〝私的利用〟とは、自分が楽しむため(家族や家庭内を含む)が前提となります。ブライダルの現場は、不特定多数の人が集まる場になり、またご祝儀は入場料にあたる解釈となりますので、私的利用の範囲外となります。
出典 著作権Q&A | ISUM

これまでで述べたように、営利性や特定多数は演奏権の権利制限ですので、複製権は関係ありません*6
ISUMも途中で気付いたのでしょう。今は下記のように修正されています。
  
著作権のQ&A | ISUM

Q3.
自分の結婚式で利用するために市販CDに収録された楽曲を複製することは、なぜ私的使用の範囲を超えるのでしょうか?
A3.
〝私的使用〟とは、自分が楽しむため(家族や家庭内を含む)が前提となります。披露宴での上映を目的とした複製は多数に向けているため私的使用とは捉えられません。なお、挙式者などから委託された事業者が複製する場合は当然に私的使用の範囲外となります。

  
これは正しいですし、ISUMの行っている権利許諾の代行申請も適法です。結婚式を行う場合、複製権を処理する必要があり、ビデオ撮影などの事業者がISUMを利用して申請を行うことは理に適っています*7
しかし、ISUMが当初出したプレスリリースは、第38条の権利制限の条件で説明していました。
そしてそのプレスリリースを利用してウェブでニュースを書いた人たちもまた、間違った説明をしているのです。そもそも彼らは、複製権と演奏権の区別がついていないのでしょうが。
そして結果的に、ブライダル事業者も正しく理解できずにいるという現状です*8
  
試しに、Googleで「結婚式 著作権」で検索した結果、上位2ページに表示される結果から間違った説明をしているものを上げてみましょう。

4/1から費用が変わる!?結婚式の曲選びに注意!【著作権】 - NAVER まとめ
  • 演奏権と複製権およびその権利制限を混同
  • 個人と事業主を混同
  • 4/1から違法になったわけでもなく、ISUMが設立されたから違法となるわけでもない
「結婚式での音楽利用」に特化した著作権管理団体、活動開始 | スラド YRO
  • 厳密にはISUMは著作権管理団体ではなく権利処理の代行申請団体(著作権管理団体は法律で規制されている)
  • 演奏権と複製権およびその権利制限を混同
  • ISUMに料金を支払うから許諾を得られるわけではない。JASRACに直接申請も可能
http://dews365.com/news/topics/wedding-copyright.html:title=
  • 演奏権と複製権およびその権利制限を混同
  • ちなみにダンスイベントの方がもっと権利処理の知識は普及している模様
お金かかるよ? ブライダル音楽の“適法化”求める業界団体が申請システム公開 - ねとらぼ
  • 同上

    
全てはISUMの間違ったプレスリリースと説明不足のせいな気がしてきました。くそー。
  
結婚式・著作権で検索すると映画や映像(上映)も係ってくるようで、そのことについてのページも多かったです。映像はまた係る著作権が異なりとても難しいので、まだ勉強していません。。
  
ちなみに、不足はあるが正しい(間違っていない)と思われるページは以下。
一番正しくてわかりやすくい説明をしてくれるのはJASRACです。JASRACさすが。

    

まとめ

結婚式の主催を考えた場合、複製権は権利処理が必要となり、その処理を行うべきは主催者、つまり新郎新婦となります。
話題のISUMのスキームは、この処理を新郎新婦まかせにせず、式場が代行しましょうというものです*9。ここは詳しくないのですが、結婚式場には新郎新婦が正しく著作権の権利処理をしているか確認する義務があるようで、もし新郎新婦が著作権を知らず、権利処理を行っていない場合、結婚式場がその責任を負うかもしれないというリスクがあります。そのリスクを回避するために、ISUMでの代行申請に市場価値が生じてくるのです。
言い換えれば、新郎新婦が直接権利処理を行えば必要ないというわけです。JASRACに詳しくありますが、直接権利処理を申請することは決して難しくなく、かつ代行を挟まない分安価でありますので、招待状などの外注を省いてコスト削減をするのと同様に、自分で勉強して権利処理を行うことで結婚式にかかる費用を抑えようと考えることができます。
しかし、著作権に関する話は非常に難しく、結婚式場などブライダル関係者はもちろん、関係団体ですら正しく説明できないことがあります。もしかしたら、今後一切BGMは使えないと言われたり、著作権のせいで非常に高額な費用を要求されてしまうことがあるかもしれません。
本来はみんなが正しく著作権を理解し、適切に権利を利用できるようにあるべきですが、著作権が難しく、理解されにくいのも事実です。著作権法下で著作物を利用する一市民として、著作権法について学び、自衛することもまた1つの道かもしれません。
  
というわけで、次は結婚式で音楽を利用する場合の複製権の許諾申請方法について調べたいと思います。
2016/1/24追記 ということでこの計画は頓挫しました。

*1:なお、知識量としてはこの前ビジネス著作権検定の上級に受かったくらいです。知的財産管理技能士弁理士には遠く及びません。

*2:これを混同した記事が多く、かつ自分でも誤解していました

*3:この編集が翻案権やその他諸権利の侵害にあたるか、複製権のみかは行為の内容によっても異なりますが、ここでは単純な部分的複製と考えます。

*4:ちなみに、これの代行処理を請け負うため立ち上げられたのがISUMという団体で、これが事態をすごくややこしくしてしまいました

*5:仮に、新郎新婦の演奏権の利用が問題になる(結婚式が私的利用ではないと認められた)場合でも、ISUMでは権利処理を行えません

*6:そもそも、不特定多数は「どこかの誰か知らない人」という意味合いなので、結婚式に不特定多数が来るわけがありません。がしかし、特定多数でも権利制限にはあてはまらないのでここでは言及しません。

*7:ISUMは個人を対象にしておりませんので、個人で申請する場合はJASRACなどに直接申請するのが良いと思いますし、その方が安価です。

*8:元々は著作権の正しい利用行為なのに、巡り巡って著作権が厳しくなったから結婚式でBGMが使うことができなくなったとか言われる新郎新婦が一番の被害者です。おこです。

*9:もちろん、結婚式のDVDなどの撮影をオーダーしている場合はその処理も入ってきますが、その主体は結婚式場(撮影者)になります。

ディズニー・オン・クラシック2014〜ネバーランド・オーケストラ(東フィル)ラストツアーの可能性?

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アナ雪のおかげで類を見ないほどのチケット争奪戦となったディズニー・オン・クラシック2014(DOC)。
プログラムも予想以上に良く、3回しか行けなかったのが惜しいくらいでした。
公演内容について語りたいことは山ほどあるのですが・・・・
でもまずはこれ。まさかの衝撃でした。
  
The Orchestra Japan 公募オーディション
  
DOCの春公演があるのを見て、メンバーのスケジュール大丈夫なのかな?と思ってたのですが、主催のハーモニージャパンのサイトにはオーケストラオーディションの広告が…
オーディションページの2015年度予定を見ると、ちゃんと「Disney on CLASSIC 2015全国ツアー、第1回定期他(60公演以上/2014年11月現在)」と書いてあります。
  
。。。
  
今年のチケットの売れ行きもあり、今後DOC事業をさらに拡大させるためには、必然なのかなと思います。
加えて、例年短期間の過密スケジュールで全国ツアーを行うDOCは、その移動の負担も大きく、参加するのが大変だというお話も聞いておりました。
  
今のメンバーがいつから参加されているのかは存じ上げませんが、DOCも今年で12周年となり、コンマスの青木さんも、ベースの渡辺さんも、そこはかとなく昨年よりほっそりされているようで、お体大丈夫かなと思ったり…
  
東フィルメンバーはDOC以外のお仕事も多いでしょうし、メンバーの負担を考えても、仕切り直しは妥当なのかもしれません。DOC用にオーケストラを組むことで、演奏会のプロデュースの幅も大きく広がるでしょう。
  
私はネバーランド・オーケストラの演奏がとても好きでした。
アンコール後の青木さんの高速弓振り、1stVn+Vaのノリノリのダンス(いつもサイドのおじいさんが2プル裏に移ったので、今年は2プルが最高でした)、パーカッションお姉さんの魔法のステッキ、管楽器の方も舞台の後ろからぬいぐるみをつけた楽器をぶんぶん振り回して盛り上げてくれました。特に今年のみなとみらい公演で見たハンドパペットのオラフを取り付けた木管楽器のエグザイルダンス、すごく面白かったです。
   
普段は大人しく座って聞くのが当たり前な演奏会であそこまで会場を盛り上げられるのは、お客さんやボーカリストはもちろんですが、ネバーランド・オーケストラメンバーの全力のパフォーマンスがあったからだと思います。
舞台上の人が少しでも恥ずかしがっていたら、お客さんもついていけませんもんね。
演奏ももちろんですが(東フィルですし)、ステージパフォーマンスという意味でもネバーランド・オーケストラが大好きで、それもあって毎年飽きずにDOCに通い詰めていたのでした。
  
そんなネバーランド・オーケストラを見ることが、もしかしたら今日のディズニー・オン・クラシック2014のツアーファイナル公演で最後になるかもしれません。
嬉しいような悲しいような複雑な気持ちですが、幸運にもファイナルを聞くことができるので、めいっぱい楽しんできたいです。
私の勘違いであることを祈りつつ、今はただただネバーランド・オーケストラの方々に感謝の気持ちでいっぱいです。
  
今日は東京国際フォーラムで行うディズニー・オン・クラシック2014のツアーファイナル公演です。
嬉しいような悲しいような複雑な気持ちですが、幸運にもファイナルを聴けるので、楽しんできたいです。

平成26年科学技術研究調査結果が公表~企業研究費の第3位は医薬品

科学技術研究調査 調査の結果

   
平成25年の研究費の総額を研究主体別にみると、総額18兆1,336億円のうち、企業が12兆6,920億円と最も多く、ここ10年約70%前後を維持しています。
なお、前年度比で約4.3%の増加。
大学等が3兆6,997億円と約20%となっており、これは10年間で微増しているようです。
  
図書館業務で他機関に文献複写依頼を行っていると、企業(財団法人含む)はお断りされてしまうことが多いです*1
理由の1つとして、営利性などで31条に適するものと捉えられないことがあります。
しかし31条では研究の主体は言及されていませんし、国の研究費全体でみると企業の研究が約7割と大多数を占めています。
それなのに、企業だから、営利だからと一律でお断りされてしまうときは少し残念です*2
  
また、平成25年の研究費を産業分類別にみると、88.7%を占める製造業のうち、「輸送用機械器具製造業」(2兆4,972億円, 19.7%)、「情報通信機械器具製造業」(1兆6,708億円, 13.2%)に次いで、「医薬品製造」が1兆4,371 億円で11.3%を占め、第3位となっています。
なお、売上高に対する研究費の比率では、製造業の中では医薬品が最も高く11.7%となっていますが、全体でみると学術研究やサービス業がより高く、大学等が含まれる「学術・開発研究機関」では78.8%にもなります。
図書館的には出版産業の衰退を示すような「印刷・同関連業」の研究費が 前年比17.5%減というのも注目のところ。
  
一般的によく知られていることですが、医薬品産業は研究開発にかかるお金も時間も膨大であり、製造と研究が密接に結び付いた産業だと思います。研究が盛んになると、自ずと学術情報流通が担う役割も大きくなってくるわけで、あまり注目されませんが、企業も含めた学術情報流通というのもの大事だなと思うのです。

*1:もちろん快く引き受けてくださる図書館もあります

*2:産学連携だとか言い出すと、もっと複雑になりますね

サキどり↑「来たゾ!図書館の逆襲!?」で公共図書館特集!(2014年11月9日放映)

NHKのテレビ番組「サキどり↑」で公共図書館が特集されていました!
  
サキどり↑「来たゾ!図書館の逆襲!?」(2014年11月9日放映)
  

放送時間が午前8時から9時の間と、出勤時間のため存在すら知らなかったのですが、たまたまお義母さんが見つけて録画していてくれたのでばっちり見ることができました*1。ありがとうございます!
   
ゲストはなんと糸賀先生。いつもの切れ味鋭い糸賀節でびしばし公共図書館について語っていらっしゃいました。
斬新な公共図書館の取り組みを紹介しながらも、論点は公共図書館の根本的なサービス・理念にからぶれず、”困ったときにはまず図書館へ、わからなければ司書に聞け”というメッセージを力強くつたえるところは、さすが糸賀先生です。
   
最近、武雄市から始まった目新しい公共図書館の建築やサービスに対して、雑誌、さらにはテレビ番組が特集し、一般市民に広く知られるようになりました*2。メディアが伝えることでその他の自治体に波及するという循環ができ、おそらく、これからどんどん、従来の伝統的なタイプから外れた公共図書館が増えていくのだろうと思います。
公共図書館地方自治体に属するものですので、地方分権にあいまって自治体それぞれの特色ある図書館ができることは良いことなのだと思います。街コンであれ、ビジネス支援であれ、その自治体の方針として打ち出したサービスを図書館が提供することは、非常に公共図書館の理に適った形だと思います。
    
ただ、一過的に目新しい図書館やサービスばかりが取り上げられてしまうと、本来の公共図書館が見えなくなってくる恐れもあります。例えば非営利性がなくなってしまったり、自治体の方針を外れてしまったりと、要するにはっちゃけちゃうことがないと良いなあと思います*3
    
その点、糸賀先生はずっと公共図書館を見ておられて、理論的な点を踏まえたうえで、最近の公共図書館の取り組みから公共図書館の役割まで、分かりやすく力強く述べられる方なので、メディアにぴったりですね。
でもテレビということで、少し緊張しておられたような気がしました。
   
   

特集された図書館

カフェや卓球場のある"滞在型図書館"

武蔵野プレイス(東京都)
   

イベントが多数開催される"攻めの図書館"

奈良県立図書情報館   
   

「死ぬまでに行きたい世界の図書館15」リスト(トリップアドバイザー

「死ぬまでに行きたい世界の図書館15」
   

"まちじゅう図書館"

小布施町まちとしょテラソ(長野県)   
   

"絵本の料理が食べられる図書館"

松本市南部図書館(長野県) 
    

"恋人に出会える!かもしれない図書館"

伊丹市立図書館ことば蔵(兵庫県)
   

"ビジネス支援をしてくれる図書館"

鳥取県立図書館
   

*1:家にいても肝心のクロ現を見逃してしまいますが。ありがとうNHKアーカイブ。

*2:散歩の達人」の特集も良かったです

*3:例えば、特集の中にあった地産地消のスーパーと図書館を併設、協働する取り組みは、やり過ぎてしまうと、図書館の非営利性、あるいは公貸権の問題に波及するかもしれません